WTI原油が再び100ドル突破― ホルムズ封鎖4週目突入、FOMC・日銀決定会合を週内に控え市場は神経質

神田隼大研究機構(KHF)経済学部・神田會證券部

 米国・イスラエルとイランの軍事衝突が3週目に入った16日(月)、ニューヨーク原油先物(WTI)は日本時間早朝の取引で一時1バレル102ドル台に達し、2022年以来の最高水準を更新した。ホルムズ海峡の事実上の封鎖は続いており、世界の石油供給の約20%が今なお途絶したままだ。日本株市場では地政学リスクとエネルギー高騰への警戒感が重なり、日経平均株価が前週末比633円安の53,819円で取引を終えた。今週は17〜18日のFOMC、18日の日銀金融政策決定会合という二大イベントを控え、市場は一層神経質な展開となっている。

中東情勢:攻撃拡大でも外交の糸は細く残る

 週末にかけて米国はイランの油田輸出インフラに対する大規模攻撃を実施、イスラエル軍も「数千の標的が残る」として作戦継続を表明した。ホルムズ海峡周辺では英UKMTO(英国海上業務部)が過去24時間に商船3隻への攻撃を確認しており、商業海上交通は事実上停止している。

 一方で外交ルートは完全に閉ざされてはいない。インドのジャイシャンカル外相は16日、「対イラン協議でいくつかの成果」と述べ、ホルムズ海峡の外交的解決の可能性を示唆した。また米政府は週内にも船舶護衛に関する多国間合意の発表を検討しているとの報道もあり、市場は一時買い戻しが入る場面もあった。ただイランのアラグチ外相は米CBSのインタビューで米国との交渉に否定的な姿勢を示しており、情勢の見通しは依然として不透明だ。

原油市場:102ドル台、2022年以来の高値 過去最悪シナリオには至らず

 WTI原油は16日早朝に102ドル台まで上昇。攻撃開始前の2月末(約67ドル)から3週間余りで1.5倍超となった。もっとも、先週9日につけた高値(119.48ドル)からは依然14%安の水準にとどまっており、過去の危機時(2022年3月130ドル、2008年7月147ドル)と比べると急騰が加速しているとまでは言えない。

 価格急騰を一定程度抑制しているのは各国の政策対応だ。国際エネルギー機関(IEA)は11日に加盟32カ国によるホルムズ通過量の約20日分に相当する4億バレルの石油備蓄放出で合意したと発表。米財務省も12日、海上輸送中のロシア産原油について4月11日まで購入を認める制裁緩和を打ち出した。投機的買い越しポジションは約22万8,000枚と大幅に増加しており、需給実態よりも先物市場でのセンチメントが価格を左右する局面が続いている。

原油価格シナリオと日本ガソリン価格の試算

シナリオWTI$/bblガソリン(¥/L条件
現状(補助金込)100〜102161〜165政府補助金継続中
補助金なし換算100〜110185〜200補助金廃止想定
リスクシナリオ110〜120204+(史上最高)封鎖2〜3カ月継続

(出所:ニッセイ基礎研究所試算・各種報道をもとにKHF編集)

金融政策:FRBFOMCはスタグフレーションの板挟みに

 今週最大の注目点は、17〜18日に開催されるFOMCだ。現行のFF金利(3.50〜3.75%)を2会合連続で据え置くことはほぼ確実視されており、焦点は声明文がインフレと景気後退リスクをどう表現するかにある。

 FRBが直面するのは「スタグフレーション」の難題だ。原油高に伴うインフレ再燃と、需要の落ち込みによる景気減速が同時に進行している。物価高を優先して引き締め姿勢を維持すれば景気後退リスクが高まり、緩和方向に転じればインフレ期待が定着しかねない。1月の米国CPIは前年比2.8%と3カ月ぶりに伸びが鈍化したものの、原油高の波及が遅れて反映される時間差を考慮すれば、先行きは楽観できない。

 加えて政治的不確実性も重なる。5月にパウエル議長の任期が満了する。後継候補としてケビン・ウォーシュ氏やハセット氏の名が取り沙汰されており、市場はFRBの独立性維持に対する懸念も抱えながら今週の結果を待つ。

日本株市場:全面安も防衛・造船が逆行高

 本日の東証プライム市場では33業種中31業種が下落し、値下がり銘柄数は1,496(全体の9割超)に達した。地政学リスクと原油高が重なり、不動産・証券・銀行などの金融株に加え、半導体関連のアドバンテスト、東京エレクトロンも利確売りに押された。

 逆行高となったのは防衛関連と環境船テーマの2本柱だ。川崎重工業・日本製鋼所など防衛関連銘柄には中東情勢の緊張を背景に防衛需要拡大への思惑買いが集まった。また環境対応型船舶を手がける造船株は過去3年間で株価が約30倍と急騰、NVIDIAを超える上昇率として市場の話題となっている。任天堂・コナミなどゲーム株にも個人資金の流入が続き堅調だった。

日本のエネルギー安保:中東依存の構造的脆弱性

 日本の原油輸入における中東依存度は約90〜94%に達し、タンカーの8割がホルムズ海峡を通過する。現在254日分超の石油備蓄を保有しており政府は「直ちに影響はない」との立場だが、封鎖が2〜3カ月以上続けばガソリン価格は1リットル204円前後まで急騰するとの試算がある。

 現在は政府の補助金継続によりガソリン価格は161〜165円台に抑えられているが、補助金なし換算では185〜200円水準が実態だ。さらに円安(1ドル159円台後半)が原油輸入コストを増幅させており、貿易赤字拡大→円安進行というスパイラルへの懸念も高まっている。エネルギーアナリストによれば、原油高騰は国内CPIを0.6〜0.7ポイント程度押し上げ、実質賃金の伸びをさらに抑制するとみられる。

今週の注目スケジュール

31718FOMC開催。据え置き確実も声明文のインフレ・スタグフレーション言及に注目。パウエル議長の記者会見でのトーン変化を見極め。
318日銀金融政策決定会合。現状維持の公算大。原油高・円安を踏まえた植田総裁発言に注目。追加利上げの時期感がどう示されるか。
週内随時米による船舶護衛多国間合意の発表可能性。実現すればホルムズ通航再開の契機となり原油・日本株の急反発シグナルに。ホルムズ海峡攻撃の動向を継続監視。

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