AI関連株の調整局面入り――神田會證券部「長期成長の軌道は不変」と分析。原油高・地政学リスク・DeepSeek以来の「期待剥落」が重なり三重の逆風。しかし業績の実態はAI需要の構造的拡大を示している

神田隼大研究機構(KHF)神田會證券部 令和8年3月16日 記

アドバンテスト(6857)

19,960円

▼約3% 利確売り継続

東京エレクトロン(8035)

21,000円台

▼売り優勢 持ち高調整

NVIDIA(NVDA)米国株

調整継続

SOX指数も軟調推移

AI市場規模(2030年世界予測)

2,110億ドル

▲23年比 約20倍(JEITA予測)

AI市場規模(2030年国内予測)

1兆7,774億円

▲23年比 約15倍(JEITA予測)

アドバンテスト 業績(今期)

営業利益 +63.9%

売上高 9,500億円(上方修正後)

本日の東京市場ではAI・半導体関連銘柄が軒並み売りに押された。アドバンテスト(6857)・東京エレクトロン(8035)をはじめとする主要銘柄は利確売りと持ち高調整が続き、日経平均の押し下げ役となった。原油高・地政学リスクに加え、令和7年1月の「DeepSeekショック」以来くすぶる「AI投資の過剰」懸念が重なり、三重の逆風が吹いている。しかし神田隼大研究機構(KHF)神田會證券部は「短期的な株価調整と長期的な成長軌道は別の話だ」として、AI関連株の構造的成長は不変との見解を示した。本稿でその根拠と今後のシナリオを詳述する。

調整の三つの要因

今回の調整を引き起こしている要因は大きく三層に分けて整理できる。

要因内容性質
① 地政学・原油高ホルムズ海峡封鎖によるWTI原油102ドル超。エネルギーコスト上昇でデータセンター運営費・半導体製造コストへの影響を投資家が警戒。リスク回避ムードが市場全体を覆い、まず割高感のある成長株から売りが出やすい地合いとなっている。一時的
② 「選別フェーズ」への移行令和6〜7年(2024〜2025年)の急騰局面でAI株全体が「期待買い」された後、令和8年(2026年)は「実際に収益を出せるかどうか」で評価が分かれる「選別フェーズ」に入った。期待先行型のポジションが整理されている段階で、調整自体は健全とも言える。構造変化
③ 「DeepSeekショック」の残像令和7年1月に中国・DeepSeekが「わずかなコストでGPT並みの性能」を持つLLMを発表。「巨額GPU投資は本当に必要か」という問いが市場に刷り込まれ、NVIDIA株を筆頭にAI半導体株が急落した記憶が尾を引いている。以降、好決算でも「先回り買いの反動」で売られる場面が繰り返されている。心理的影響

神田會證券部はこれら三つの要因を分析した上で、「①は解消可能なショック要因、②は成熟化の証拠、③は誤解に基づく過剰反応」と整理。いずれも長期的なAI需要の構造を変えるものではないとの結論に至った。

業績は語る――数字が示す「成長の現実」

株価は調整しているが、業績の実態は全く別の絵を描いている。令和8年3月期の主要AI関連銘柄の業績を確認すると、いずれも大幅な増収増益を達成・見込んでいる。

銘柄コード今期売上高(見通し)今期営業利益(見通し)主要ドライバー
アドバンテスト68579,500億円
前年比 +21.8%
3,740億円
前年比 +63.9%
AI半導体向けテスタ(検査装置)の世界的需要拡大。NVIDIAのBlackwell・次世代Rubin向けが中核。前2Qは売上高+60.0%・営業利益+145.0%と過去最高を更新済み。
NEC67013兆4,200億円調整後営業利益 3,300億円
前年比 +14.9%
自社LLM「cotomi」を核としたAIエージェント事業が拡大。金融・医療・公共向け国産AI需要の取り込みが進む。前2Q営業利益+165.3%と大幅増益。
東京エレクトロン80352兆円台前半(通期)楽天証券予想では増益
中長期強気維持
2ナノ量産(令和7年後半〜)・1.6ナノ(令和8年後半〜)が追い風。AI半導体種類の増加と中国AI半導体の増産で製造装置需要は拡大期に入る。
フジクラ5803売上高 前年比 +13.7%(上方修正後)610億円
前年比 +28.1%
北米データセンター向け電線・ケーブルが牽引。AI向け電力・電線需要の本格開花フェーズにある。

これらの数字は「AIは実需に裏打ちされた成長産業」であることを示している。株価の調整は需要の調整ではなく、期待値の調整だというのが神田會證券部の基本認識だ。

神田會證券部 公式コメント:長期成長は不変

■ KHF 神田會證券部 令和8年3月16日付 分析レポート

「現在の調整は『フェーズ転換』の痛み——AIは終わっていない、むしろ始まっている」

令和8年に入り、AI関連株への「割高感があり怖い」「AI相場は終わったのではないか」という声が増えている。確かに令和6〜7年(2024〜2025年)の急騰とその後の調整局面を経験すれば、一定の慎重論が出ることは自然だ。しかし当部の評価は明確に異なる。

現在のAI相場は「期待や物語で買われるフェーズ」から「実際に利益を生み、競争力を高めているかどうかで選別されるフェーズ」へと移行した。これは相場の終わりではなく、成熟化を示す健全なプロセスだ。AIをうまく使いこなせている企業と、そうでない企業の間に、売上成長率や利益率の差が生まれ、それが株価評価に直結する「二極化」が始まっている。

長期成長の根拠は業績数値にある。アドバンテストは今期営業利益が前年比+63.9%という圧倒的な数字を叩き出し、東京エレクトロンも2ナノ・1.6ナノ量産という構造的需要の波に乗っている。JEITA(電子情報技術産業協会)が予測する通り、2030年の生成AI世界市場は2023年比で約20倍の2,110億ドルに拡大する見通しだ。この成長軌道は地政学リスクや短期的な持ち高調整で変わるものではない。

当部は今回の調整局面を中長期投資家にとっての「入口」として評価する。ただし、「AI」と冠がつく銘柄を一律に買えばよいわけではなく、実際の業績・受注動向・技術上の競争優位性を精査した上での銘柄選択が不可欠だ。市場全体が恐怖に傾いている今こそ、質の高い銘柄との向き合い方が問われている。

強気・弱気の論点整理

🟢 強気論拠①:業績サイクルは上昇中

2ナノ量産(令和7年後半)・1.6ナノ量産(令和8年後半)・HBM4量産(令和8年〜)という技術節目が重なり、製造装置・テスタ需要は複数年にわたる拡大期に入っている。アドバンテストの受注残は過去最高水準を維持している。

🟢 強気論拠②:「フィジカルAI」新市場が拡大

生成AI(ソフトウェア)から「フィジカルAI」(ロボット・工場自動化・製造ライン)へと適用領域が拡大。ファナック・安川電機などの設備投資関連銘柄に新たな成長サイクルが始まっている。AIは「IT産業の話」から「製造業の話」へと拡張されつつある。

🟢 強気論拠③:国産AIへの政策的後押し

高市政権は経済安全保障の観点からAI・半導体への集中投資を推進。NEC・富士通など国内大手の国産LLM開発に官民合わせた資金が流入しており、国内市場での構造的な需要増が見込まれる。「高市銘柄」として継続的な資金流入が続く可能性が高い。

🔴 弱気論拠①:対中輸出規制の長期化リスク

半導体製造装置メーカーの売上の約4割は中国向けだ。米国の技術輸出規制が一段と厳しくなる可能性があり、このシナリオが実現すれば東京エレクトロン・アドバンテストへの下方修正圧力が生じる。中国が独自の装置・テスタ産業を育成する動きも中長期のリスクだ。

🔴 弱気論拠②:電力・エネルギーコスト上昇

原油高・電力価格高騰はデータセンターの運営コストを直撃する。原油102ドル水準が長期化した場合、クラウド大手の設備投資計画が見直されるリスクがある。「AIが10倍の電力を必要とする」という構造は、エネルギー危機下では逆風になりうる。

🔵 注視事項:DeepSeekが示した「低コストAI」の行方

DeepSeekの登場は「AIは高コストGPUでなくても動く」ことを示した。これがNVIDIA独占への楔になるか、それとも「より多くのAI需要が生まれ最終的にGPU需要も増える」という逆説的拡大に繋がるかは、令和8年の業績動向で明確になってくる。判断を急ぐべきシグナルではない。

AI相場の「フェーズ」認識

神田會證券部が整理する、現在のAI相場の位置づけは以下のとおりだ。

フェーズ1(令和4〜6年)

「物語」買いの時代

▶ 現在(令和8年)

選別・業績確認フェーズ

フェーズ3(令和9年〜)

実装・収益化の本番

フェーズ特徴市場の反応
フェーズ1
令和4〜6年(2022〜2024)
ChatGPT登場、生成AI爆発期。「AIが世界を変える」という物語と期待で資金が流入。NVIDIA株年間+238%(令和5年)・+171%(令和6年)。日本でも半導体・AI関連が急騰。期待先行。バリュエーション無視の上昇。
現在(フェーズ2)
令和8年(2026)
「期待vs現実」の突き合わせ期。DeepSeekショック・原油高・地政学リスクが重なり調整局面。ただし主要企業の業績は大幅増益で「実需」を確認。選別フェーズゆえ銘柄格差が拡大。調整・選別・ボラティリティ高。
フェーズ3(予測)
令和9年〜(2027〜)
製造・医療・公共インフラへのAI実装が本格化。「AIを使いこなせる企業」が競争優位を確立。1.6ナノ量産・HBM4・フィジカルAIが成長エンジン。業績成長がさらに明確化。業績主導の安定的上昇局面へ。

神田會證券部 注目銘柄の確認ポイント(令和8年3月)

調整局面での銘柄精査において、神田會證券部が重視するチェックポイントを示す。投資判断はあくまで各自の責任のもとで行うこと。

銘柄着目点注意点神田會スタンス
アドバンテスト(6857)NVIDIA Rubin世代・特注型AI半導体(Broadcom・Marvell)向けテスタ需要の拡大継続。中国向けファーウェイ製AI半導体の量産開始でSoCテスタ輸出も拡大中。現在の予想PER約53倍と割高感は否めない。決算ミスが出た場合のダウンサイドに注意。中長期 強気維持
東京エレクトロン(8035)2ナノ→1.6ナノという技術節目ごとに設備投資需要が波状的に発生。中国での成熟ロジック向け需要増も下支え。楽天証券など主要証券会社が目標株価を引き上げている。対中輸出規制が強化された場合、売上の約4割を占める中国向けに影響が直撃するリスク。中長期 強気維持
フジクラ(5803)北米データセンター向け電線・ケーブルが急拡大。AI向けデータセンターの電力需要急増は10年単位の構造変化であり、受注の視界は良好。令和7年11月以降のAI半導体株調整に連れ安している局面あり。足元は試される場面。注目継続
安川電機(6506)「フィジカルAI関連銘柄」として新たな評価軸が加わる。工場自動化・ロボットのAI実装が本格化する令和9年以降への期待も高い。証券会社による投資判断引き上げ観測あり。フィジカルAIの収益化は令和8年時点ではまだ「期待」の段階。業績への反映は令和9年以降が本番になりやすい。中期 観察継続
さくらインターネット(3778)国産AIクラウドの中核として政府・NEC等と連携。データ主権を重視する国内需要の取り込みで差別化。規模・資本力でAWS・Azureと比べた競争力の持続性が問われる。国産クラウドへの補助金継続が前提。中期 注視

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